馬流天星の方向性について


 年明けに発行した無料レポートで紹介しました谷川善久氏のコラム『枠内駐立不良につき』から、こちらの記事をご覧ください。

「競馬頭脳低下のデス・スパイラル 前編」
(注.以下の文章は当該記事の後編が出る前に書いています)

 この記事の中で、谷川氏は、競馬の普及のためには「頭の悪い人にも馬券を買ってもらえる(あるいは競馬ファンになってもらえる)方策を練るべき」であり、そのためには「「競馬なんて、考えなくても馬券を買えるし、こんなに儲かるんですよー」と煽って騙して引き込めばいい」との論を展開しています。

 確かに、そのような活動をしなければ新規の競馬ファンを増やすのは難しいかもしれないですが、私の考え方は違います。

 競馬ファンを増やすと考えるよりも、競馬ファンを辞めさせないことを考えたほうがわかりやすいと思います。私の経験上ですが、競馬をやったことがあるという方は、男性ならそれなりの割合がいます。しかし、勝てないから、または、勝っているうちにと、途中で辞めてしまっていて今も続けているという方は少ないのです。

 競馬の楽しみは究極的には予想にあると思います。自分なりの予想方法論を創っていく、その上達が面白いから、そして、一発大当たりを出してやろう(俺にならできるはずだ)と夢を見られるから、競馬を続けられるのです。もちろん、競馬が織り成すドラマを楽しんでいる方や馬や騎手を応援している方、馬を見ているだけで幸せだという方もいるでしょうが、導入としては予想から入る方が多いのではないでしょうか。

 多くの辞めてしまった方は、その方法論の構築、馬券上達の面白さを知り、夢を見るところまで達することができなかったと考えます。既存で考えられるきっかけは、友達に誘われてとか、ディープインパクトを見てとか、いろいろあると思いますので、問題は、競馬に出会ってからそのレベルに達するためのサポートがあるかどうかのほうだと思います。

 騙しかどうかはともかく、冒頭の谷川氏の言葉を現出しているのではないかと思われるのが、最近流行りの「1万円が100万円に〜初心者でも儲かる」とか、「誰でも簡単に万馬券が獲れる」等というわかりやすい名前のついたノウハウ系の予想情報(メルマガ)です。
 ノウハウ系のメルマガは、読者数増加のノウハウも導入していますから、競馬と関係のないレポートを請求しようとした人の中で競馬に興味がある方が登録をされるなど、新規競馬ファンの開拓に役立っていると思われます。

 そういったメルマガ発行者たちによって、競馬ファンは増えてくれるでしょうか。ディープインパクトがターフを去り、メディアへの露出が少なくなっても競馬を続けてくれるでしょうか。

 ノウハウ系メルマガは、買い目を馬番だけで表示しているだけのところが多いです。完全に人から与えられる予想というのは、当たって当然であり、外れるととても無味乾燥に感じるものです(馬券本を買ったことのある方ならわかるはず… ^^;)。例えば1日で5Rくらい予想があって、偶然不運が続いたとしても、結果が大幅なマイナスとなれば、「儲かるって言ってるけど、儲からないじゃないか」と、クレームを出したり、心で思ってその情報媒体を去るでしょう。それがある程度競馬を楽しむレベルまで行っている人なら他の情報媒体を探すのでしょうが、新規の競馬ファンは競馬そのものとの最後の別れを選ぶかもしれません。

 私が訪問させて頂いたところの上位ノウハウ系メルマガは、「この成績でよく自信満々のことが言えるものだ」と思ってしまうところが多く、この点が非常に心配です(時間があれば上位メルマガの無料予想の的中率や回収率を出してみたいのですが、なかなかそんな余裕もないです)。

 馬流天星ももちろん、実績を出していかなければ競馬を伝える媒体として存在する意義が少なくなっていくことは肝に銘じておりますが、ご覧になっている方々も、ご自身の予想スタイルを確立させた上で、または、初心者の方は自身のスタイル構築の素材と考えながら、参考にして頂ければ幸いです。

 馬流天星においては、「「いやいや実はですね、競馬ってそんなに簡単なものじゃないんです。でもね、考えて考えて、それで馬券を買って当てるのが楽しいんですよ」と正面からアピール」することを貫きたいと思っています。

 さまざまなファクターをもとに予想する醍醐味をそのまんま伝えたってついてきてくれないというのは、もしかしたらそうかもしれません。私のメルマガが現状中級者向けであればそれも仕方ないですが、このような情報発信をしながらご覧頂ける層を広げていきたいと思います。もう少し予想が上達すれば、一見して凄いと思って頂けて、新規ファンにも競馬の深い面白さを伝えていけるのではないかとも思っています。

 競馬にはセオリーが存在します。儲けるためのテクニックもあります。競馬は儲かる! と言ってその実力を披露する人がいてもおかしくはありません(私も主張は同じです)。でも、競馬の深い面白さは単純にお金が儲かるという次元にはないです。

 私は馬番を挙げるだけの予想はせずに、こう考えてこの馬を選びますというところまで予想の過程を書きます(頂戴するメールを拝見していると、買い目よりもコメントを楽しみにされている方が多いです^^;)。馬の個性も重視しています(そのせいか、私の予想には馬への愛情を感じるとのご感想を頂いたこともあります)。馬券や予想に関係あるなしを問わず、過去の感情を揺さぶられるレースを思い出せば語ります。予想が外れても結果を受け止めて、反省回顧します。そういった活動が、新しく競馬の世界の扉を叩いた方々の競馬に対するイメージアップ、ご覧頂いている方皆さんの馬券力向上はもちろん、感性の深化に少しでもつながってくれれば、苦労しながらでもメルマガ発行を続ける意味もあるかなと思えます。

 また、競馬ファンが競馬を離れる原因には他に、レース自体に魅力がなくなってしまったからということもあるでしょう。私の周囲には、テイエムオペラオーが覇権を握った2000年頃に競馬をやめたという方が多いです。
 タニノギムレット、キングカメハメハなど有力馬の故障も相次ぎましたし、強い馬は種牡馬の価値が下がる前に引退してしまいます。例えば、エルコンドルパサーの引退式はJC当日の昼休みに行われましたが、私の気持ちは冷めてしまっていたのが印象的です。勝手なファン心理であることはもちろんながら、今日走って欲しいと思いました。
 そういう面で、ディープインパクトを凱旋門賞の後も国内のレースを使うと言っている金子オーナーには頭が下がります。是非、凱旋門賞のビッグタイトルを獲得し、最後まで無事に走り終えてほしいですね。

 個性のある馬や騎手を生み出し、育て、ドラマ多き競馬を魅せていくよう、主催者側や関係者に訴えていくことも、いち競馬ファンとして必要だと思っています。

 馬流天星をご覧になって頂いている方と競馬との関わりがより味わい深いものになるように、今後も何ができるか考えながら、鋭意努力していきたいと思います。

                            (初稿2006.08.17、最終更新2006.08.17)